「風雅な旅そして出会い」 山下 一 高知県香南市 小学校教諭 本ツアーには夫人の美保さんと共に参加
今回のスペインツアーを、私として一言で言い表すならば、「風雅な旅」でしょうか。 余計な話を少ししますと、以前仕事を一緒にしたある同僚(女性)は、自分が思ってもいなかったことが目の前で起きると、いつも、「ありえんしーっ‼」(ありえない!)と叫んでいました。 ここスペインで、私たち一行のランチは、午後1時~2時ころスタートし、オードブルから始まる本格的なもので、2時間から2時間半かけてゆったりと取るものでした。それも毎日です。こんなこと私たちの日常では、「ありえんしーっ‼」。 「風雅」という言葉は、優雅という言葉と似てはいますが、意味合いが少し違います。風雅には、自然な雅興のニュアンスが含まれます。 ツアー4日目、この日はいよいよ馬旅へと出発する日である。 前日、参加する面々はどの馬に乗るか、馬とのマッチングを行っていた。アンダルース、白馬が5頭、黒と茶色が3頭である。私は馬には不案内ではあるが、馬はそれぞれ性格が異なり、乗り手との相性というものがあるらしい。 皆さんが口々に、「ハミが強い」とか、「敏感だ」などと言っていた。残念ながら今回私は、馬に乗らない。訳はここでは省略するが、私は自転車で同行する。そのため、少し安心なような物足りないような感じだ。 朝、セビリヤから出発地の牛牧場へとバスで移動する。車窓にはアンダルシアの起伏に富んだ広大な丘陵地帯が広がっている。一見北海道の美瑛を想起させられるが、それとも違う。何とも捉え難い風景のように感じた。台地が波打っている、山ではなくあくまでも丘だ。連想するのは、ラマンチャの丘、ドン・キホーテ、でも、そこはやはりスペインの大丘陵地帯としか言いようがない。 今日トレッキングするルートは、無辺際に広がるこの丘陵地ではなく、鉄道予定路だったところだそうである。つまり、鉄道を敷設する予定でロードを整備したが、結果、鉄道敷設は取りやめになり、ロードだけが残ったというのである。今その道が、ハイキングやサイクリング、そして、馬のトレッキングなどのための憩いのトレイルに転用されているそうである。そこを、今日と明日の2日間、我々一行は馬でトレックする(私と主催者の田中さんは自転車であるが)。 日本からのツアラー8名とホストのイグナシオさん、そして、サポーターのラマンチャノ男(と私が勝手に名付けた。マカロニウエスタンに出てきそうなかっこいい男なのだ)の計10名が颯爽と出発する。中でも塚本真由美さん(FRCのマネージャーでトレイルガイド)はさすがで、馬上の姿が風雅である。不安な要素が全くと言っていいほどない。スペインの大地をどこまでも駆けて行きそうである。 我々はそのあとをジープで追った。我々とは、ドライバーのマノロさんと女性アシスタントのアンドレアさん、そして田中さんと私である。 粛々と一行は進んでいく。乗馬というものは、乗り始めこそ緊張感が強いかもしれないが、時間が経つにつれて自然と体が馬に馴染んでくるものだ。そうすれば、少しはリラックスできて、周りの景色を楽しむ余裕も出てくるだろう。馬上からの眺めはまた格別なのだろうな。少しずつ、私の内側に羨望の気持ちが高まってきていた。(ぐやじぃ~。俺も乗りたいよう。) 2時間ほど経過したころ、本日のピクニックランチの場所に到着した。 テーブルがセッティングされ、シェフが二人パエリヤを直径1メートルはありそうなでっかいフライパンで調理していた。ワインやビールなど各種飲み物もそろい、今や遅しと我々一行を待ち構えていた。これを風雅と言わずして何と言おう。 ゆったりとしたランチタイムが始まった。天気もいいし、気候も爽やか。皆さんの顔が、全てのこの世の煩わしさから解放されたノンストレス状態になり、とても穏やかだ。 良き仲間と良き風景、そして、良き食事。心底人の心をほっとさせる空気がそこにはあった。 たっぷり2時間をかけ、ランチタイムは終了した。 今日の目的地、コリペ駅舎ホテルまでここから1時間と少々らしい。 ここからは、私たち二人は自転車だ。電動自転車なので、大変楽である。 私は、自転車で一行の先になり後になり(大体後だったが)、付き従う。写真をいっぱい撮った。田中さんはもちろん写真を撮るのが半分仕事であるから、ことあるごとに自転車を止めてベストショットを探していた。驚いたことに、昨日から私たちに同道しているホルヘさんが、ドローンを飛ばして空撮している。プロの商業カメラマンということで、崖を駆け上ったり、岩の上に立ったり、あらゆるアングルで写真と動画を撮っていた。 列車を走らせる予定だったトレイルを、一行は、本日の目的地に向かってただ前へ前へと歩を進めた。私はそのあとを追いかける。風が頬をなぜていく。私は、今回このツアーに参加して本当によかったと思った。心の中に溜まっていたもやもやしたストレスの塊が、雲散霧消していく。自然と頬の肉が緩み笑顔になっていく。
美保夫人と共に
ホストのイグナシオ氏の別荘で
この自転車で馬と共に旅をした
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