第179回 2020年1月15日(水)

 

テーマ:

第1部 人工授精による乗馬生産の夜明け 

第2部 エキタリヨン(Eqita Lyon・リヨン馬博覧会)2019報告

第3部 乗馬ワンポイントアドバイス

 

講 師:沖崎 誠一郎(おきざき・せいいちろう)氏 鍋掛牧場代表

 

 新年会を兼ねた2020年第一回の定例会は、お馴染み沖崎先生をお迎えしました。

沖崎先生は2019年10月末から11月初めにかけて渡仏されました。目的は日本導入スタリオンの選定、種馬牧場視察など。併せてヨーロッパを代表する馬博覧会エキタリヨン(Eqita Lyon)も視察なされています。競馬と乗馬の両分野で頂点を極めた日本を代表するホースマンが見てきたヨーロッパ馬術界の最新情報についてお話を伺いました。

 

講師略歴

 1959年栃木県生まれ 鍋掛牧場代表取締役 競走馬育成協会関東支部長

 牧場の3代目として物心ついたころから馬に乗り始め、高校大学と日本大学馬術部で馬づけの生活を送る。佐賀国体少年馬場1位、全日本学生選手権1位など優勝を多数獲得し関東学生最優秀選手、全日本学生最優秀選手に選ばれる。モスクワオリンピック総合競技日本代表。

 オーストラリア、ドイツ、フランス、アイルランド等で調教、育成技術を学ぶ。

生産者として目黒記念、ステイヤーズステークスに勝ったマウントニゾンを生産。育成者として中山大障害勝ち馬を3頭、アルゼンチン共和国杯勝ち馬の調教を手掛ける。

永年の競走馬調教の経験や牧場の特色を生かし、乗馬の生産、調教も手掛けている。

第1部 人工授精による乗馬生産の夜明け 

 

 皆さん人工授精という言葉はよくお聞きになると思う。仔馬を馬せる方法として3つある。一つは種付け これは日本で一番ポピュラーに行われている。それから再生種付け、それからストローによって注入し受胎させる方法がある。

 

 日本は本交種付けがほぼ100%といっていい。日本はサラブレッドが年間1万頭以上生まれる国で、多い時、アラブの競馬をやっていたころは1万4千頭がピークといわれていた。殆どが日高で生まれていた。

 競馬に供する馬は本交種付け以外認められていない。今現在もそう。ようするに人工授精がダメということ。それはなぜかというと。血統が非常に大事なので不正が行われる可能性があるから。有名な種馬の子供だといって高額取引をされて、実は父親が違っていたなんてことがよくある。牛の世界でもある。そういうことを避けるため、本交種付け以外認めない。

 雌馬が種付けを受ける場合は、希望する種馬が居る所へ行かなければならない。昔は日本の有名な雌馬がヨーロッパやアメリカに行ったけど、最近はヨーロッパから来る。かなりの数が来ている。それだけ優秀な種馬が日本にいる。これが本交種付け。

 

 次が再生種付け。複雑な言い方は避けようと思うが、といって雌馬のかわりの台に種馬がマウントして、横取りといって人工膣で精液を採取する。本交種付けができない馬、マウントされるのを非常に嫌う、鎮静剤が効かない、などの雌馬に対しては、再生するしかない。

 日本の馬関係者がヨーロッパを訪れて、人口受精はヨーロッパでは簡単に行われているのに、何で日本は?とよく言われるが、殆どがこの再生種付けです。

 人口受精といっても、精液をとってすぐに、受胎可能な雌馬が待機していて、速やかに注入するというのが主流。これは擬牝台に種馬を乗せるという作業があるが、だいたい種馬は再生か本交に決まっている。ヨーロッパでは競技馬で同時に種馬というのが多いので、安全のため、あるいは競技場に行ってエキサイトしないため再生の方法を取る。これがいわゆる我々が耳にする馬の人口受精。

 

 で、私が今日お話する凍結精液というのは、再生と同じ方法でとった精液を凍結して保存することができる。メリットとしては、とっくに亡くなってしまった馬の精液が今残っているということ。牛もそう。

 ただ日本の農水省は、戦後にできた家畜改良増殖法が非常に厳格で凍結精液輸入を認めていなかった。一昨年2018年の春にフランスと日本政府が衛生条件を取り交わして、凍結精液輸入が解禁になった。ただしフランスからのみ。我々に馴染み深い有名な種馬がたくさんいるドイツ、オランダ、ベルギー、スエーデンあたりの精液は入れられない。フランスのみです。これには色々な事情がからんでいて、そのへんは割愛するけど、フランスからだけでも入るのは画期的なこと。実際行われていることだけど、ドイツに現役のスタリオンがいたとして、フランスの凍結精液を作る会社が依頼をかけると、ドイツからフランスに出張する。国境をまたげばOK。それは普通に行われている。

 後でお話するが、11月に私がフランスに種馬を見にいったとき訪ねたスタリオンの血統はオランダのKWPNだった。KWPNしか作らないというフランスの生産者の所に行った。

 フランスに視察の依頼があったときに、凍結精液解禁の国はフランスだから、フランスに行くのはあたりまえだけど、やっぱりドイツ、ベルギー、オランダの種馬見たいよな、と言いながら行った。

 ただ、フランスは行ってみるとすごかった。やはり馬文化の深い国というか、エキタリヨンの所でお話しするが、たくさん獣医さん、生産者に会ってきたけど、フランス人なりのプライド、これはドイツ、オランダ、ベルギーには負けないものがある。

 だから今はフランスからしか入れられないけれど、ドイツ血統もオランダ、ベルギー血統も入ればいいじゃないと思って、今僕もお手伝いをしている。

 

 おそらくこれから一斉に凍結精液が売り出される、広告も出るだろう。日本でフランスから凍結精液輸入している会社は3社ある。北海道、仙台、大阪の会社。そこそこ有名な種馬の精液は確保しているので、それをお買いくださいという宣伝が今年から始まるはず。私もその北海道の会社とお付き合いをしていて、まあ売れるにこしたことはないのだが、ただし問題があって受胎率が悪い。凍結精液になると、たぶん50%以下。フランスのトップクラスのスタリオンで精液採取、それを凍結する作業、遠心分離機にかけるとか、いろいろな作業を見させてもらったけど、かなり厳密にやっても条件が整わないと受胎にいたらないという大きな問題がある。

 ただヨーロッパは受胎率が悪かろうがやる。馬を作る。日本はこれからだけど、私がこのテーマをお話する大きな理由は、安易に凍結精液でヨーロッパの血統が手に入りますという考えを持たないでいただきたいということ。今言った様に非常に難しい。本交の種付けももちろんそうだけど、私も毎シーズンやるけど、妊娠適期を獣医さんと見極めて、排卵のタイミングを計って種付けをする。これでとまるはずだと思っても不受胎の場合はある。それでも本交の場合は自然の摂理に逆らわないので、細菌感染、空気感染をしにくいなど色々良い条件があって、本交が一番自然なやり方だと思う。

 

 凍結精液は、37度のお湯に精液が固まったストローをさっと入れて、一瞬で溶かして、そのストローごと陰部に入れて子宮の中に注入するという作業。熟練が必要で繁殖専門の獣医さんでもむずかしい。

 北海道十勝の肉馬生産する育成牧場では普通に行われている作業。あと遠野の馬の里でもやっている。作業的には同じ。作業的には同じでも条件がちょっとでも狂うと受胎しない。

 ひとシーズン、2月頃始めれば5月頃までトライして何とか出来ればいい。今のところそんなレベル。ということで、この凍結精液は夢のある事ではあるが、難しい。フランス人はおおざっぱ。日本人の場合、みなさん真面目に取り組むし器用なので、負けないなという感じはしている。受胎率が65%くらいまで上がっていくと、そこそこの頭数が凍結精液によって生まれると思う。ヨーロッパのトップクラスの馬が日本で生まれることが夢ではない。今年種付けすれば来年生まれるのだから。現役のオリンピックに来るような馬が日本で作れることになる。大きな夢があるのでなんとかやっていきたい。

 

 もう一つ大事な話がある。

 馬の種類。受胎率があがって凍結精液がポピュラーなものになったとしよう。じゃあドイツ血統のホルスタイナーを日本にいるホルスタイナーの雌馬につければ、生まれた子供はホルスタイナーになるはず。ところがこれは国際的には認められない。

 何故?

 日本はホルスタイナー協会に加盟していないから。日本はどこの協会にも加盟していない。オランダのKWPN協会に加盟していて、例えば日本で、私の那須の牧場でKWPNどうしの子供が生まれたとして、KWPN協会の会員に私がなって登録をして、協会が、その馬は我々が認めるKWPNですよと言ってくれれば、KWPNを名乗れる。

 

 皆さんのなじみ深いアラブ。アラブ種というのは日本の中では厳密にいうと無いと考えていてください。

 100アラブといいますよね。アラブどうしで生まれ、いかにもアラブの特徴を持った馬はだれが見てもアラブ。ところが国際的なアラブの生産協会に日本は加盟していないので、アラブを作ってもアラブを名乗れない。

 で、手っ取り早く、日本にはサラブレッドの雌馬がたくさんいるので、アラブの種馬をサラブレッドにつければアングロアラブができる。簡単に考えますよね。だれが見たってアングロアラブだろうと。僕もそう思うが、フランスのアングロアラブ協会が拒否する。

 

 実際にそういう事件があった。業界の中であまり知られていないが、遠野で生まれたセルフランセ、種馬も雌馬もセルフランセ。これを遠野のセリでJRAが買った。馬事公苑で調教して素晴らしい馬になったので、馬事公苑の日本を代表する選手がその馬に乗ってヨーロッパ遠征に行った。ワールドカップでエントリーして、日本産セルフランスとエントリー表に書いた。セルフランセ協会から訴えられた。認めないと。

 で、慌てて日本の馬事協会と遠野の馬の里はセルフランセ協会と提携してセルフランセが名乗れるように後付けでやった。

 さっき言ったホルスタイナー、ハノーバー、あとは古い馬乗りにはなじみ深いトラケーネとか、こういうのを種類だと思っていますよね。実際馬の種類として語ることは多いが、種類ではない。

 トラケーネ地方で、トラケーネン牧場で生まれた馬をトラケーネ協会が、これはトラケーネと認定しないとトラケーネではない。血統ではない。認定するかしないか。

 トラケーネは歴史的なものが定かではないので、失礼かもしれないけれど、まだプロシア時代、ドイツの前、オーストリアのハプスブルグ家のリピツアーナに対抗して、プロシアで良い馬を作ろうということで国王がアラブを元に作ったのがトラケーネと言われている。だから、トラケーネも元をただせばアラブ。

 どこの乗馬クラブに行っても、ホルスタイナーとかハノーバーはポピュラーにいる種類。最近はKWPNがすごく多いけど。これも各協会があって、血統をたどっていくと、母系にサラブレッドがいたり、父方の母系にサラブレッドが入っていたり、血統的には色々入っている。

 ただホルスタイナー協会が、この馬はホルスタイナーですよと認定したらホルスタイナーになれる。日本にそういう認定された馬がどのくらいいるかというと、あまり数はいない。

 

 例えば栃木県で一時有名になった那須トレーニングファームのヤマトという大障害馬、これは瀬古さんのホルスタイナー。でもホルスタイナー協会の認定馬ではない。実際種付けして子供も生まれている。子供を作ってはいけないとかではなく、日本産ホルスタイナーを名乗れないということ。

 

 話が長くなってしまうが、凍結精液が解禁になって、例えば私はドイツのハノーバーを作りたいと凍結精液を買った。獣医さんと雌馬を選んで受胎しました。11か月後に子供が生まれた。その子供をどう扱うかという大きな問題を今日本が抱えている。長い間抱えているが全く進展していない。

 

 日本は日本スポーツホース種というものを作っている。

在来和種、道産子や木曽馬、そういう血量の多い馬は日本乗系種。もう少し軽種に近い、サラブレッドの血が入っていたり、アングロアラブだったりした馬は、日本スポーツホース種と名乗りましょうという取り決めはずいぶん前からされている。

 ところが認定制度が無いから、日本スポーツホース種って何?という状態がずっと続いている。世界に胸をはって出せる馬を作りたいなというのが私の考え。そうしないと、いつまでたっても日本の乗馬の生産は活性化しない。一生懸命作っている生産者が釧路、十勝、帯広、遠野などにいて、日本産乗用馬がたくさんいる。中には良い馬もいる。最終的にはそういう馬に値段がつかないということ。

 

 我々馬の生産に携わる人間にとって、馬の値段が上がらないということは、生産を続けられるかという問題に直面すること。例えば高い凍結精液、子供がヨーロッパで活躍しているなどというと、ストロー2発情分、馬によって違うが、たとえばストロー6本、一回に2本ずつ使いなさい。6本だと3発情分を1セットにして80万とか120万という値段で取引されている。

 まあ、3発情分あれば受胎するでしょうといって、100万位のお金を払って、種付け料と同じですよね、子供を作ったとして、たとえばハノーバーの有名な馬だとしても、ハノーバーを名乗ってはいけなくはないが、胸はってハノーバーと言えないということ。

 

 だから、僕が今考えているのは、日本スポーツホース(ハノーバー)にすればよいと思っている。日本の馬行政ってなかなか難しいところがあって、お役所にはお役所の理屈がある。それは理解しているが、そろそろオリンピックが終わったら、そのへんのことを真剣に取り組まないと日本産の常用馬というのはいつまでたっても良い馬ができないと思う。

 

 良い馬のできない国は正直にいうと相手にされない。ヨーロッパに行って、なぜドイツが強いのか、何故オランダが強いのか、ベルギー、スエーデンが何でいつも優秀な馬と選手が出てくるのか、というと皆、馬産に力を入れているから。

 前にもここで話したが、馬産に力を入れている国は、競技がテスト。優秀な種馬を作り、実際に競技で成績を出す。

 それが今あまりにも高額で取引されているので、とても日本人の手には入らない状況だけど。さっき雑談中に馬の値段の話があったが、たぶん今度のオリンピックに出てくる馬場馬で最高額8億円くらいだと思う。

 その8億の馬を負かそうという馬がいる。その馬は10億円だといわれている。

それがオリンピックに来るかどうかは分からないけど。馬ってそういう値段なんです。

 

 ですからトップクラスはまあ別としても、日本でポピュラーな良い馬を作れるはず。

生産者がいるし、生産のインフラも整っている。それが証拠に日本の競走馬は今や世界中で活躍している。なので、できなくはない。サラブレッドの技術を使えば、明日からでもトップクラスの馬を作ることはできる。乗馬の場合はそのインフラが整ってないということ。

 

 皆さんは生産とは無縁だと思われるかもしれないが、その変のことを理解していただいて、馬ライフを送っていただくと私としては非常に助かるな、ありがたいなと思っている。

 

 最近アハルテケが雑誌に出たりして、青森の八戸でアハルテケ牧場作っている方がいるが、輸入された直後ウチでお預かりをしたことがある。黄金の馬と言われる素晴らしい馬。

 アハルテケは原種はアラブ。改良に改良を重ねてできあがった種類なので、古い種類だとはいっても人の手で作り上げた馬。今地球上に人の手の入っていない馬、原種といっていいような馬はいないはず。

 ちょっと前まではロシアに、モウコノウマとかプツワルスキーでしたか、発見した人の名前がついているが、あれが唯一原種だと言われていた。最近DNAを調べて、人の手で作られたということが分かっている。それが野生化したというだけですよね。

だから地球上に人の手の入っていない馬はいない。

第2部 エキタリヨン(Eqita Lyon・リヨン馬博覧会)2019報告

 

 エキタリヨンになぜ行ったか、先ほど田中さんから説明があったけど、種馬を見に行った。日本に凍結精液を入れてくる馬だけでなく、これから入れられる可能性のある、比較的種付け料が安い、将来性のある馬を入れようじゃないかということで、馬を見に行ってきた。

 

 パリ周辺に種馬がいるので、パリで見て、ついでにエキタリヨンにとなった。

エキタリヨンは5スターをやっていて、ポニーのグランプリもやる。そこに将来日本に入れたい馬が何頭か現役の競技馬として出ているので、リヨンまで足を延ばした。

 

 エキタリヨンって僕正直知らなかった。ドイツのエクイターナは知っているけど、エキタリヨンって何だろうという感じで行った。行ってビックリだった。

規模が大きくて素晴らしい。

 

 リヨンの前にパリの種馬しかいない厩舎に行った。ポスターが厩舎の壁に貼ってあるが、この馬KWPNで6歳。すごくよく歩く。若馬のクラスで76%位だしている。この馬の凍結精液を入れられるということで見に行った。

 たまたま精液検査で出張中でいないといわれ、代わりに他の馬を見てといって出してもらった。6歳スタリオンでセントジョージクラスと言われた。大きすぎた。日本には合わないなと思ってこの馬はやめた。

 

 もう一頭5歳を見せられた。まだスタリオンテストを受けていない馬。この馬すごく良かった。まだ無名なので値段も、衛生条件合格して日本に精液入れられるとしたら、たぶん種付け料10万円くらいで、できるのではという希望を持てる馬。血統はKWPN。

 

 パリの中心部から1時間半くらい西に行ったところだった。大家さんが隣で乗馬クラブをやっている。雰囲気がよくて 日本のお客が来たら外乗で儲けるよという気の良い親父がいた。近所はすごく深い森。ちょうど猪狩りが解禁になって撃っている音が聞こえていた。

 

 パリに帰ってきて、観光は車の中からエッフェル塔を見た程度でリヨンに行った。

リヨンまで新幹線で2時間。リヨンの町中にエキタリヨンの旗が出ていた。動画もずっと流れている。まずそれに驚いた。

 

 会場の入り口。ロンジンがスポンサーで5スターの大障害と馬場。130のポニーのグランプリ。馬車のワールドカップ、ウエスタン(レイニング)もやっている。

開催は5日間。エクイターナは2週間やるけど、エキタリヨンの良い所は5日間で全部やる。

 

 中に入ると、馬具好きの人は多分動けなくなる。余りにも建物が大きくて、どのくらいかよくわからないけど、日本人の通訳が言うには幕張メッセの3.5倍。これは多目的の催し物会場で何でもやるそうだけど、中に馬場が8面あった。一歩入ると馬具屋だらけ。

 

 いったい何競技あるのかわからないくらい競技をやっている。

 エンデュランスの馬具のメーカーもすごく立派なブースを出していた。

 

 自由飛越をやっているところで、終わると即セリ。

僕観覧席にいたけど、前の席にこの馬を狙っている親子がいた。中学生くらいの娘さん。お父さんとカタログ見て、この馬のとき立ち上がって見ていた。ひととおり出場馬がでるとすぐオークションが始まる。取引値段は日本円で80万位だった。ところがその親子の予算は60万だったらしくて、自分が落とせなかったので、その子泣き出してしまった。また来年こようとお父さんが慰めていた。そういう文化はいいなと見ていた。

 

 いろいろな馬を生産している人が集まってそれぞれにブースを出している。

ロバの種馬もいた。俺のロバはすげんだぞと自慢する。いや、ロバは要らないよと。

 

 1日中朝8時半から夜11時まで、平均2万人入るそう。いすゞ自動車が馬運車作っている。シャシーだけだろうけど、いすゞのブースに行ったら馬運車があってビックリした。久保田のトラクター、馬場のハローかけに使う。「久保田が一番」とフランス人が言っていた。

 

 これがメインの5スターの準備馬場。エルメスとロンジンがすぐわきでブースを出している。手前はレストラン。はじに写っているのがドイツの有名なクリスチャン・アールマン。久々にお上りさん状態。「わー、アールマンが居る」。

 

 エルメスが2スターくらいの競技をやっていた。130の競技。エルメスは表彰式もとってもおしゃれ。日本の御殿場や三木でこういうことやらないかなと思う。演出が上手だった。

 

 この葦毛馬に乗っているのがマーカス・アーニング。写真なかなか撮れなかったけど、フランスの有名なペネロペという女性がいた。40歳くらいになるけど、ペネロペが出てくると会場がすごく盛り上がる。

 

 ウエスタンのエリアに、馬具屋もすごくたくさんあった。フランス人がこんなにウエスタンやるの? というくらい。レイニングの試合をやっていた。ウエスタンの解説をフランス語というのもちょっと変な感じだった。

 

 感心したのがこれ。若い獣医たちが待機していて、ポニーをおいてある。訪ねてきた子供に聴診器で馬の心音を聞かせている。あと写真撮れなかったけど、妊娠しているポニーもいて、お腹の中の仔馬の動きをエコーで見せてあげたりして、将来勉強して獣医さんになりなよ、みたいな活動をしている。これは日本でやるといいと思う。子供たちすごく関心持ってみていた。

 

 セラピーホースもいた。フランスで1頭だけ、病室まで入って末期の人のケアをする馬で有名なのがいる。その馬だった。テレビも取材していた。

 

 この人、騎馬警官隊の隊長さん。騎馬警官も自分たちの活動をPRするためブースを出していて、隣に普通の制服を着た警官もいた。

 

 これ馬車、実際に乗せてもらって、馬車の操縦もさせてもらった。この赤い服を着た着た人は生産者。親子3代、この馬の種類を守り続けている。この人も獣医さんだと言っていた。農家専門の獣医だということだけど、この馬を代々作っている。

 

 フランスは重種の生産が盛ん。今でもそうだろけど、ナポレオン時代、ナポレオンのいるパリまで新鮮な魚を運ぶために、カレーという港町からパリまで、鮮魚を運ぶためだけの道を整備した。ところがどんなに急いでも2日かかる。魚が腐るのでこれはダメだとなったときにフランスの農家で荷馬車を引いている人が、駈歩の持久力がすごくよくて馬車を引く力もあって良い種類がいるから、それを試させてくれといって記録を作った 8時間でカレーからパリまで行った。4頭建て。

 ナポレオンが感動して、よし この種類いっぱい作れといって今でも生産している。

葦毛で、名前すみません忘れたけど、昔「乗馬ライフ」でその馬の特集があったはず。

「パリ、鮮魚街道を走る」みたいなタイトルだった。

 

 これがコネマラ。フランス産コネマラ。僕この馬、日本にいる時から見る予定だったけど、フランスはコネマラを守っていて葦毛が多いそう。アイルランドでは色々な毛色がいる。フランスは葦毛に限定していて、今も80%以上が葦毛だそう。

 

 この人、フランスコネマラ協会の会長さん。他の人の話だと彼の作るコネマラはとても良い。スタリオン今回2頭連れてきているので見なさいといわれ、見させてもらって1頭を選んできた。

 

 リヨンの会場へ僕は毎日ホテルから地下鉄と路面電車に乗って行った。終点が会場。

長いフェンスがあって、何だろうなと思っていた。ずいぶん広いなと。

2日目に電車に乗っていたらヒューッとジェット機が下りて来た。プライベートジェットの滑走路だった。ヨーロッパ中から来る馬のオーナーたちの為のジェットの滑走路だった。びっくり。

 5スター見るのに僕らは8000円とか12,000円の席取ったけど、オーナーたちが座るのはVIP席。競技か終わったら、選手がすぐ報告に行ったり、乾杯したりする所。1晩120万円。4人掛けディナー付き。どうでしょう?来年あたり。

 

 オリンピア(英国)もそうでしょうし、エクイターナ(ドイツ))も素晴らしいけど、フランスも本当に演出が素晴らしかった。競技と競技の間も飽きさせないし観客が良く分かっている。

 

 ポニーのグランプリもみた。選手の年齢は高校生くらいまで。 130 の正オクサーをこのポニー飛ぶの?それが普通にビュンビュン飛んでいく。その中に種馬がいた。2頭の内の1頭はたぶん凍結精液入ってくる。

 

 僕はポニーも作った方が良いと思っているが、日本にはなかなかポニー文化が根つかない。ポニー専用の競技がない。女性はコネマラくらいの大きさの馬に乗ると良いと思う。

 

 2ヵ月前からチケット売り切れで残念だったのがドレッサージュ。イザベルが優勝した。シャーロットもいた。それだけ有名どころが集まっている大会と知らずに行って5日間興奮しっぱなしで帰ってきた。

 

第3部 乗馬ワンポイントアドバイス

副題:馬は人が考える以上に楽を選ぶ

 

 私の話は5回目で、初めての人はいらっしゃらないということで、重複するかもしれないけれど、馬ってすぐに人の指示を無視して楽を選ぶ生き物です。

 それを乗る側の人間は、この子は臆病だとか、この子はちょっとさぼりがちな子だとか、色々なことをいう。僕もそう。

 実際自分が乗っている馬がどういうタイプの馬かということを良く考えるけど、我々プロのトレーナーという仕事をやっていると、馬って全部そうじゃないかと思う。

 みなさんエンデュランスやっている方たくさんいらっしゃるので、エンデュランスに役に立つ話をさせていただくと、たとえば乗り手が常歩の時に、歩度を伸ばしていきたい、と思う。あるいは速歩の時に、軽速歩でもう少し速度を上げたい、そういう時にちょっと利口な馬たちは、常歩だったらすぐ速歩をしてしまう、速歩の時はすぐ駈歩をする。そういうことって経験ありますよね?

 

 ドレッサージュの場合、たとえば20mx60mの中で、斜線手前を変えて、伸長常歩という指示があったとして、人間は伸ばそうとするのに、馬は小刻みに速歩をしてしまって点が伸びないなどということがよくある。

 原因としては、間違った扶助を与えたり、必要以上の扶助を与えてそういうことになってしまうことが普通なのだけど、馬という生き物を考えたときに、馬は常歩を速くと扶助を与えても、タッタッタと速歩に逃げてしまう。それって馬は楽な方を選んでいるだけ。

 だから馬ってそういう生き物だと考えると、解決法はどうすればいいだろう? 

 これはエンデュランスでも、競技に当てはまるものではないでしょう。競技の時には、そこまで考える必要はないと思うが、普段トレーニングをしている時に、常歩の詰め伸ばしをやって、マックスの常歩をさせたいと思った時に、速歩に安易に逃げられたらダメ。

 あるいは軽速歩で大きな輪乗りをしていて、一定のリズムで馬をしっかり歩かせたい、速歩をさせたい。その時に、ちょっとしたことで駈歩になってしまう。それは馬が楽な方を選んでいると考えてください。馬はそういう生き物だと。そうすると、じゃあそれを解決するのにどうすればいいのと言ったら、技術とかではなくて、馬を納得させられるかどうかと考える。

 

 伸長速歩で、まっすぐ平らな所は、だれもが走りたいけど、ここは軽速歩でたったと行きたい所があったとして、そこで駈歩に逃げられたり、あるいは自分の任意の速歩にならなかったりというのは良く経験することだと思う。

 我々ブリティッシュの乗り手もそうです。何でここで駈歩しちゃうか?

 それは、馬を納得させられてないから、楽を選んでいる。人の指示に従ってしっかりと伸長速歩をすることを選ばず、いいや駈歩しちゃえって、そっちを選んでいる。ただそれだけ。

 

 そう思うと、じゃあそれをどう解決するのとなったら、一人ひとりが、皆さんが馬を納得させられるか、それ次第となる。技術と思いたいですよね、僕なんかもそう。でも普段のエクササイズで繰り返し繰り返し求めたいことを要求する。これが一つの手。単純です。

 20mでも30mでも輪乗りで一定のリズムで歩かせたい、しっかり歩かせたい、馬がしないのは納得していないから。じゃあ繰り返し繰り返しやって納得させればいい。

 

 もしかして自分は間違ったことをしているかもしれない、と馬に気づかせること。

聞いただけだと確かに難しいかもしれない。でもみんなやっていること。根気よく繰り返しやれるかどうかは皆さん次第。やらずに「この子は走りたい子だから」「この子は物を見るから」と言い訳しているだけ。失礼な言い方をしたけど、僕もそう。

 

 技術的な事を一つだけ言うと、停止を頻繁に入れること。

 

 馬ってあまりおりこうさんじゃないという話を前にここでしたことがあると思う。

でも、繰り返し繰り返しされると納得する動物。なので、任意の速さで乗れなければ、任意の速さになるまで繰り返しやる。停止をしたり、速歩だったら常歩に落とす。常歩にするだけでなく停止をさせる。また速歩をして任意の速歩まで持っていく。どこかで馬が納得するところがあると思う。

 

 皆さん位のキャリアがあれば、気づくはず。あ、今いい感じ。そうなったら誉めてやればいい。そこで初めて愛撫してやればいい。頻繁に愛撫する人いるけど、馬は嬉しくない。ちっとも。あーっと思っているかもしれない。ありますよね。

 

 自分が乗っている馬が良い状態じゃないのに、インストラクターから誉められただけで馬を愛撫する人がよくいる。馬は混乱するだけ、なんで褒められたのかと。

 

 一つ一つの動作は馬が理解しやすい、単純なことを勧めます。その中に停止を入れること。繰り返し停止を入れる。そのうち小さな力で馬がすっと止まるようになるはず。あるいは声をかけただけで止まろうとするはず。これは条件反射。そうしたら一杯誉めてあげてください。納得しましたか?と馬に問いかければいい。

この単純なことをなかなかやってない。私もそうです。

 

 さっき中馬先生が、「生涯で最後の馬かもしれない」といって新馬を調教しているとおっしゃっていたけど、「楽しい」とおっしゃっていた。何で楽しいかというと馬が学習していって、自分のいうことをどんどん聞いていくからじゃないですか?

 自分の好きな乗り方でいい。軽速歩が好きなら、一日中軽速歩でもいい。繰り返しやることで、馬は自分のやりたいことでなく、人の指示に従った方が楽かもしれないと考え始める。そこがミソです。僕らの馬の調教もそこを利用している。

 どっちが楽かを馬に選択させない。人間の都合の良い方を馬に選択させるように持って行く。馬にとって難しいことになるけど、その辺のことを考えてやっていただくと、違ってくるかなと思う。

 

 停止をたくさんやってはいけないということはない。頻繁に停止をすることで、馬に考える余裕を与える。だんだん強い扶助から小さな扶助で馬が反応するように持っていく。そうするとかなり違ってくると私は思う。我々がやっているちょっと特殊な調教も、そういうことの応用。

 

 以前ここで、馬は捕食される側の生き物という話をした。突き詰めていくと生きるか死ぬか。このままでは、自分は危険な方向にドンドン行ってしまう。だからそこから逃げようといつも考えているとすれば、馬の行動ってなんとなく納得がいく。

 しかし、それを勝手にやられたら乗っていられない、エンデュランスのコースを外れずに乗るのがだんだん難しくなるかもしれない。ここは駈歩、ここは速歩、ここは常歩で息を整えよう。それが自由自在に行くのがエンデュランスの醍醐味だと僕は思うので、それができない状況だとしたら楽しくない。だから、乗り手の指示に従うのが楽なことなんだと馬を納得させてください。

 

 僕は明日からまた一頭やっかいな馬をやらなきゃいけない。プロが匙なげた競走馬。

去勢もしたけど、危険な馬。たぶん3日くらいで、どういうことか馬は考え始めると思う。楽な方に行く結果、人を無視することになっている馬なので。乗るのは怖いのでウチのスタッフを乗せるけど(笑い)。僕の仕事は一つだけ「大丈夫、乗れ」(笑い)。

 

 その辺を考えていただくと、少し皆さんの乗馬ライフが変わるかなと思います。

単純です。やるかやらないか皆さん次第。以上です。

 

質問

(野見)一時期預かったというアハルテケはトルクメニスタンから来た馬ですか?

 

(沖崎)ロシアとトルクメニスタンとラトビアからです。ばらばらに。オーナーさんは1人です。

 

(野見)3頭来たんですか?

 

(沖崎)今、6頭います。ウチで種付けして日本で生まれています。青森産のアハルテケがいます。

 

(野見)私は日本で乗れないと思っていたので、トルクメニスタンに乗りに行った。

トルクメニスタンで輸出はあまりしないと伺っていたので、青森に来たというのは聞いていたが、沖崎さんが預かられたというのは初めて伺ったので。

 

(沖崎)新幹線で八戸行ってください。乗れます。もと競走馬の牧場で閉鎖した所を借りて、長谷川さんという女性がやっています。今、もちこみの馬が一頭と、ウチで種付けして生まれた馬が2頭いるはずです。金色が3、葦毛が1、黒が1、あとパロミノぽいのが6頭います。1頭は乗り易いはず。アハルテケってちょっと厄介な性格ですけど。

 

(野見)強かったです。

 

(沖崎)エンデュランスにいいですよね。心拍数上がらない。アラブは上がって、すとんと落ちるじゃないですか。元に戻る。アハルテケは上がらない。汗血馬と言われるだけあって凄い。代謝が普通の馬と違うと思う。

 

(田中)アハルテケは日本では見られないと思っていたけど、そんなに入っているのですね。25年前にトルクメニスタンからキルギスタンまでのシルクロード騎馬マラソンというのがあった。アハルテケで1000マイル1600キロ、80キロを20日間やるというレースだった。日本から行った人が2位になった。

エンデュランスライダーとして、いつか乗ってみたいなと思っていたが、今日までチャンスが無かった。

 

(村井)金色でなく、銀色のアハルテケがいると聞いた。

 

(沖崎)メタルカラーというのがいる。これは金色より高いそう。日本には入っていない。ウチに銀色にみえる葦毛がいた。皮膚の色がピンクなので葦毛ではない。サメですよ。

 

(箭内)先生の所で日本人向けの馬を作ると聞いたが。

 

(沖崎)日本にはKWPNを良く入れているが、日本人には大きい。オランダ人は大柄。

日本人に向いた馬を本来作るべき。

日本には優秀なサラブレッドの雌馬がいる。それを資源と考えて、ヨーロッパの小柄の馬を入れれば、能力が高くて日本人が乗りやすい馬ができるはず。コネマラがそう。コネマラのクレバーさ、穏やかさ、辛抱強さ。そこにサラブレッドで少し軽さを加えると良い常用馬ができると思う。

 

(田中)ミルトンがコネマラの血が入っていたとおっしゃっていたでしょ。

 

(沖崎)ミルトンはそんなに小さな馬ではないけど、一世を風靡した馬ですよね。ジョン・ウイテカーが乗って、僕ら憧れの馬だった。ミルトンの母系にコネマラが入っていた。ネットで調べてもらうと分かります。賞金一番稼いだ馬ではないでしょうか?

ソウルオリンピックくらいまで活躍していた。(了)

フリーダム・ライディング・クラブ 

Freedom Riding Club

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